あなたの口元であなたを覆う
そのひとつの白い布の正体は
あなたが与えられないためのものですか
あなたが与えないためのものですか
あなたの白い境界線はその両方を担い
ひとつの存在がふたつの対義をもてあます
どちらでもいいじゃないかとごまかしの風
どちらでもあるのだと手品師の声
善良な人だと思われたくて
常識的な人だと思われたくて
紳士的な人だと思われたくて
臆病者だと気づかれたくない
自分をひどく守りすぎる自己愛を
他人を思いやる慈悲の心にすり替えて
よく今まで生き延びて来たね
誰にもバレやしないと安心したね
けれどどうかこの顔を隠しておくれ
いつまでも騙され続ける浮世を見下して
あなたは子宮の海の中で安らぐ
なにひとつおそれを知らされない根の国
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