ロシア人が笑わないというのは本当か? 〜噂という凶器〜

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30日間のロシアビザを取得し、ぼくは1ヶ月にわたりロシアを旅してきた。その旅もそろそろ終わりを告げようとしている。

ロシア人が笑わないというのは本当か?

・ロシア人のイメージ
・ロシア人が怒っているというのは本当か?
・最初の洗礼〜ホテルのフロント女性の突然の怒り
・ウラジオストクのロシア人の友人
・噂という凶器
・ロシア人が笑わないとき
・自作詩「あなたの歌を聞かせて」

・ロシア人のイメージ

さて、ロシア人と言えばどのようなイメージをお持ちだろうか。パッと思い浮かぶのは、なにかちょっと不機嫌な感じとか、英語をあまり話さないとかいう程度のことだろうか。ロシアと日本は地理的には近いにもかかわらず、韓国や台湾というような隣人の国よりは訪れる機会も極めて少なく、またロシア人との交流も少ないため、どうしてもイメージで語ることが多くなってしまうのではないだろうか。

まず多くの日本人の人々が思うのは、ロシア人はなにか怒っているような、不機嫌なような雰囲気を醸し出しているということだろう。先日の放送されていたイッテQでも、ロシア人は笑わない、なぜならば笑うとバカだと思われるからだというような内容をやっていた。番組内では、イモトがイケメン店員に話しかけても決して笑わなかった、しかし可愛いスタッフの女の子が話しかけるとイケメン店員は少し笑顔になったという、結局ロシア人が笑うか笑わないかというよりは、どの国でも男はスケベだというオチに持っていったのであるが、さて実際はどうなのだろうか。

 

 

・最初の洗礼〜ホテルのフロント女性の突然の怒り

さてロシア人が笑わない、不機嫌、怒りっぽいという最初の洗礼をぼくが受けたのは、宿泊したウラジオストクのホテルでだった。ウラジオストクはぼくの旅の最初の街であり、ホテルのフロントまではほぼロシア人との会話はなかったので、いわばロシアで初めて長く会話するのはそのホテルフロントの女性だったのだ。

そのホテルのフロントの女性、たしかにあまり笑わない。日本ならば店員はニコニコ微笑みながら接客するものであろうが、ここはなにを隠そうロシアなのだ。別にあまり笑わないことでこちらに危害はないのでそのままの彼女の態度を受け取っていた。そして支払いの話になったとき、ぼくはクレジットカード払いを要求した。

これは当然の権利であった。なぜなら、クレジットカード使用可能のVISA,Masterなどのマークの書かれた札が、きちんとフロントに立てかけられていたからである。しかしクレジットカードを使おうとすると、あまり笑わないフロントの女性は余計に不機嫌になって、今日はクレジットカードは使えない、現金で払えと言ってきた。え、今日は使えない?じゃあ明日ならいいの?明日クレジットカードで支払えるなら明日クレジットカードで支払いたい旨を申し入れると、女性はさらに不機嫌になり、なんで現金がそんなに嫌なの?!現金で払えばいいのに!と怒り出した。

ぼくは唖然としてしまった。日本ではこのように、店員が客に怒るなんてありえない。しかもクレジットカードで支払ってもいいとわざわざ立てかけてある札の前で、クレジットカード払いをしようとしている人に対して怒っているのである!なんて自由に自分の感情を表現していい国なんだと感動してしまった。ここはヨーロッパ、店員と客は平等という観念なのかもしれない。

しかし怒られたとてこちらも怯んではいられない。クレジットカードを使用する権利はあるのだ。クレジットカード使用可能の札の前だし、クレジットカード払いをして楽天ポイントをたくさん貯めたいのだ。現金なんて原始的なもので支払うと、ポイントが付かなくて損をするし、現金をキャッシングする回数を減らしてなるべく手数料を小さく抑えたい。ぼくが粘ると、なんと女性は、じゃあいいわよ!と言い放ち、その場でクレジットカード払いをしてのけた。え!クレジットカード払い今日できるやん!今日はできないとかウソやん!ぼくは唖然としてしまい、これが怒りっぽい国ロシアかと立ちすくんでいた…。

しかしその女性、それ以降は非常に親切にしてくださり、怒ったこともなかったかのようにさっぱりと付き合ってくれた。すぐ怒ってもすぐ忘れる、それがロシアなのだろうか。

 

・ウラジオストクのロシア人の友人

そのホテルでは友達もできた。ソフィーという女の子で、仕事でウラジオストクに来ているという。日本が大好きのようだ。彼女はロシア人には珍しく英語を話すことができる。彼女にロシア人は笑わないと聞いたけれど本当?と聞くとええそうよと答えていたが、その彼女はとても笑顔だったのが印象的だった。

彼女の同僚というディモンも加わり、3人でウラジオストクの街に繰り出した。ふたりともよく笑い、よく話す。聞いていたロシア人とは全然違う印象だ。これ以降にも1ヶ月間、たくさんのロシア人と触れ合ったが、怒っているとか不機嫌と感じたのはその最初のホテルのフロントの女性と、モスクワのホテルの男性くらいで、その他の人々は実に優しく、よく笑い、朗らかで楽しい印象だった。決してロシアが不機嫌な国とは言い難い結果となった。それよりもむしろ、素朴で、あたたかな非常によい人々の印象を残す国となったのである。

 

・噂という凶器

やはり現地に来て、現地の人と交わらなければ本当のことはわからないと強く思った。ロシア人が笑わないとか、不機嫌だとか、そんなものは噂に過ぎないのだ。あまりロシア人と関わったことのない人々が自分の意見も持ちようもなく話し合っていることも多いし、また大きな権力を持ったテレビや雑誌などの存在が、自分のコンテンツを面白く仕立て上げるために固定観念を植え付けることだってありえる。

噂はいつも、おそろしい凶器だ。そして自分の五感で確かめもせずに、大きなものの流れにしたがって、悪い噂を次から次へ垂れ流す人の心も、また凶器でありうる。自分自身でも肝に命じておかなければならないと思う事項である。これは国の印象のことのみならず、日常の人々の関わりの中でも非常に重要なことだと感じるのである。

またこれは、ぼくが旅を続ける理由のひとつだ。あらゆる悪意のある偽りの噂を自分の中から消去し、実際に自分自身で触れ合うことにより、自分の感性から来る新しい観念を自分の中に自分自身で生み出し、情報をアップデートすることである。そうでなければ、ろくでもない人間たちの噂ばかりに翻弄されながら生きて、本当に自分の人生を生きていると言えるだろうか。誰かの悪意のある思いの中で、誰かを知らず知らずのうちに傷つけながら生きるなんてまっぴらごめんなのだ。

 

 

・ロシア人が笑わないとき

しかし、ウラジオストクのよく笑う朗らかな2人の友人たちも、笑わなくなる瞬間があった。それは写真撮影のときに起こった。

それは非常に印象的な写真だった。ぼくとロシア人2人の3人で一緒に写真を撮ったのだが、日本人のぼくだけがとびっきりの笑顔で、2人のロシア人は真顔であった。それはもう、驚くほどの真顔だった。え、さっきまでの笑顔はどうしたのと2人に問いたい。ほくのこれでもかと言わんばかりの笑顔と、真顔のロシア人2人、非常にシュールな写真となり、たしかにこれは国民性を表しているかもしれないなと思った。

 

 

・自作詩「あなたの歌を聞かせて」

あなたの歌を聞かせてください

あなたがこれまでに成し遂げて来たこと
あなたがこれからどうしたいかなんて
どうでもいいことだわそれよりも
あなたの歌を聞かせてほしいのです

あなたができるすばらしいことや
あなたがまとう地位や名誉も
それはたくさんあることでしょうそれよりも
あなたの歌を聞かせてほしいのです

人間にはもっと大切なことがある
世の中の人々が噂し合うことよりももっと
大切な鍵があるそれが何かを
求める人さえ少ないの

わたしは通路をさがし出す
あなたがあなたの本能と
結びつくための通路の色を
わたしはあなたの歌に聞く

練習したって上手くならないわ
歌には生まれる前からの約束がある
生まれる前から既に決められたことを
たかが生きている者に変えることはできない

本能と口が直接的に真っ直ぐに
通じ合う者の歌を聴きながら
わたしは野性に戻って行くの
美しく率直な闇を辿って

 

 

 

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