人間様が通れば魚は逃げていく、そう思っていた時期がぼくにもありました…。
ゴマモンガラに追いかけられ噛まれる恐怖!!!魚は人間が来ると絶対に逃げていくというのは本当か?
・「魚は人間が来たら絶対に逃げていく」という絶対的法則
・波照間島の夢のような時間
・恐怖!逃げないどころか人間を襲ってくる魚現る!!!
・ゴマモンガラは噛み付いて来る恐怖の魚
・「魚は人間が来たら絶対に逃げていく」という絶対的法則
沖縄の海を泳いでいると、様々な種類の魚に出会う。人生の10年間を沖縄で過ごしてきたぼくにとって、沖縄の海は親しみ深く、海の魚というものがどのような性質を持っているのかもわかっていたつもりでいた。お父さんと一緒になって生まれ故郷の川で魚を捕まえたりもして、幼い頃から魚というものはこういうものなのかとわかっていたものだ。
ぼくが確信し信じて止まなかった魚の性質とは、魚というものは人間が来たら絶対に逃げていくということだった。魚は用心深く、臆病であり、こちらが近づきたくて静かに近寄ってみても、人間の気配を察知して即座に逃げてしまう。これは本能として、大きな生物に食べられてしまっては種の保存ができないという、ある種当然の行動だと言えるだろう。
ぼくはこれまで生きてきて、「魚は人間が来たら絶対に逃げていく」という法則を打ち破った魚はいなかったし、魚は絶対に逃げてしまうものだから近づいても無駄とさえ思うようになって行った。そう、日本有人としての最南端の波照間島を訪れるまでは…。
・波照間島の夢のような時間
ぼくは琉球諸島をめぐる旅のさなかで、ずっと行きたかった日本の有人島としての最南端、波照間島へと足を運んだ。波照間島は石垣島からフェリーで行ける離島としても他の離島に比べて格段に遠く、波の具合によってはフェリーの欠航も多いというので行けるのかどうか心配していたが、ぼくが行った時には特に問題なくすんなりと訪れることができた。
最南端の波照間島は、まるで夢のような島だった。さとうきび、風、ヤギ、青空、碧い海、獣道、真っ白なサンゴの浜、海色のかき氷、あらゆるものが幻のように感じられる不思議な島だった。少し宮古島に似ているとも感じた。
・恐怖!逃げないどころか人間を襲ってくる魚現る!!!
波照間の竜宮城のように美しく、ウミガメとも一緒に泳げる夢のようなニシ浜で事件は起こった。ニシ浜には今まで見たこともない魚が泳いでいた。特徴的な顔でお世辞にもすっきりと整った顔ですねとは言い難い、唇が分厚くて前に突き出ている主張の激しいお顔だった。ほーこんな顔の魚もいるのかとぼくは気にせず泳ぎ続けていた。
泳いでいるとぼくの泳いでいく先に、その唇が分厚い魚が止まっている。しかしぼくは気にせず進路を変えずに突き進んだ。ぼくの中には「魚は人間が来たら臆病だから逃げていく」という法則があったのだ。今までの人生で出会った全ての魚が例外なくそうだったし、魚というものは巨大な人間様がお通りになるのなら道をあけて当然だという、ある種傲慢な気持ちも持ち合わせていた。しかしそんな傲慢な心を反省させてやると言わんばかりに、分厚い唇の魚は逃げなかったどころか、なんとぼくに向かって攻撃してきたのだ!!!!!!
信じられない!人間が来たのに魚が逃げないなんて!さらには攻撃を仕掛けてくるなんて!魚は一目散にぼくの方へ来て、信じられないことにぼくの膝の肉に噛み付いて来たのだ!痛い!!!!!怖い!!!!!魚に食べられる!!!!!
いつも魚をむしゃむしゃ食べていただけのぼくが、まさか魚に噛みつかれ食べられそうになる恐怖を覚える日が来るなんて夢にも思わなかった。その魚は小さいので食べられると感じたのは少し大げさだが、それでもあの突進力と噛み付くパワーの強さにはそう思わせられるほどの圧倒的な迫力があった。もう怖くて海になんて入れない!!!!!
・ゴマモンガラは噛み付いて来る恐怖の魚
事の顛末を波照間島で泊まっていた民宿の夜ご飯の際に披露すると、爆笑されたと同時に海の魚に詳しい人がその魚について教えてくれた。その魚はゴマモンガラといい、気性が荒く、特に繁殖期には巣に近づくと攻撃的になって襲って来るというのだ。画像を見せられたらまさにその魚だったので、ぼくは自分がゴマモンガラに襲われたのだと知った。ゴマモンガラ怖い…。
この日の出来事を境に、ぼくは人間の方が魚よりも強いんだという傲慢な思い上がりの心を捨て去り、人間が魚をむしゃむしゃいつも食べているように、魚だって同等に人間に攻撃的になり噛み付くこともあるのだと、そして噛みつかれたらとても痛くて泣きそうになるのだと、ゴマモンガラからの教えを噛み締めていた。