人間の名前がたったひとつだというのは本当か? 〜名前の神聖と宮古島の不思議な風習〜

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たとえどんな名前で呼ばれる時も花は香り続けるだろう。

人間の名前がたったひとつだというのは本当か? 〜名前の神聖と宮古島の不思議な風習〜

・人間の名前
・名前のシステム
・宮古島の不思議な風習〜悪魔からの守護〜
・自作詩「〜本名〜」

・人間の名前

人間の名前というものは不思議なものだ。親の願いが託されたたったひとつの名前を、一生背負いながら生きていくというのは、微笑ましくもあり宿命的でもある。当然だが、自分の感性や好みが、自分自身の名前に思いに反映されることは決してない。どんなに親元を離れて独立してはるか遠くの土地で暮らしていたとしても、自らの祖先からの願いを身にまとっている気配がするだろう。血の流れを遡上して、ぼくたちは祖先の願いの声を聞いている。

名前というものを人は毎日使用し、呼ばれ、書き、それを自分の分身であるように感じている。それは自分自身を示す記号であると同時に、親からの願いの唱えでもある。名前というシステムを常用する限り、ぼくたちは親の願いの記号として一生を暮らし、その宿命は死ぬまで、そして死んでからもずっと必ず続いてくのだ。それはとても興味深い事実である。

 

”いくつもの河を流れわけも聞かずに
与えられた名前とともに
すべてを受け入れるなんてしなくていいよ
わたしたちの痛みが今、飛び立った”

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・名前のシステム

しかし今は一生同じ名前を引き継ぎながら生きていくことは普通でも、昔の日本では立場が変わったり出世する度に名前が変わるシステムもあったようだ。たったひとつだけの名前を一生引き受けて生きていくのは、実は珍しいことなのかもしれない。時代によって名前のシステムも変容していくようだ。

時代にもよれば、国にもよるのかもしれない。ぼくが旅で出会った中国人や韓国人や台湾人は、外国の人々がわかりやすいように西洋的な名前を自分で勝手に作って持っていた。逆に日本人であまりそのような人を見かけたことがない。国によっても名前の観念は異なっていそうだ。

 

日本で最も売れた映画の「千と千尋の神隠し」では、名前を奪われることによって、千尋は異界の労働へと巻き込まれていく。自分の本当の名前を奪われるということは、それほど重要であることが示唆されている。それを奪ってしまえば契約が成立し、または支配することが可能となり、そして名前という言葉自体が強力な意味深い霊力を帯びているようにも感じられる。日本人の間で古来より信じられている言霊の力が、名前という言葉にまで及ぶという考えは自然なものだろう。

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ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社

 

・宮古島の不思議な風習〜悪魔からの守護〜

ぼくは宮古島で名前にまつわる不思議な思い出話を聞かされた。それを聞かせてくれたのは60歳前後の宮古島出身の女性であり、彼女は何気なく幼少時代の思い出を語ってくれていたに過ぎないが、ぼくの中では直感的にものすごいインパクトを残して、この心の中に残存し続けている。

彼女は幼い頃、周りの人から本物の名前で呼ばれなかったそうだ。彼女に限らず、昔の宮古島にはそのような風習があったらしい、本物の名前の代わりに”神様の名前”をあだ名としてつけられていたというのだ。それは他の子供達も同様であったらしい。彼女はそのことについて詳しくは知らず、なんでだったのかしらと不思議そうだったが、ぼくはすぐに「千と千尋の神隠し」のことが連想された。

本当の名前を知られることは、おそらく悪いものに支配される恐ろしい行為なのだ。本当の名前は強い霊力を帯びており、それを知られたり奪われたりすることにより悪魔に魂を奪われる可能性すらある。神聖な本名はそっと奥の方に隠しておいて、悪魔や悪いものたちを弱い幼子から退散させるために、代替としての”神様の名前”を子供にあてがい、日常的にそれを使用していたのではないか。

ぼくは彼女の話を聞いて、「千と千尋の神隠し」の他に、ネパールで出会った親子のことを思い出していた。ネパールの山奥をトレッキングしていた際に、ある民家へ立ち寄った。そこでは可愛らしい子供がお母さんに抱かれていた。子供は目にお化粧をしていたので、女の子かと思ったら男の子だった。

お母さんによると、小さな男の子は女の子よりも弱い。小さな男の子は女の子よりも悪魔に襲われやすく、またその悪魔は目から入ってくるものであるから、魔除けとして男の子の目にお化粧を施すのだという。またお化粧することにより、男の子ではなく女の子だと悪魔に思わせることで、男の子を悪魔から守るという意味もあるという。

古来のアジアでは、多くの工夫や方法を使いながら、幼子を悪魔から守っていたのかもしれない。

 

 

・自作詩「〜本名〜」

ぼくの魂を誰にも明け渡さないため
誰にも本当の名前を教えない
悪魔が追ってくるかもしれないよ
名前がバレたら襲われてしまう

我を守るため 子を守るため
偽物の名前をつけなさい
誰が悪魔かはわからない
浮世でその名を通しなさい

誰にさえ明かされない秘密を
誰もがひとつ持っている
美しいものや醜いものと
正しいものと間違いが絡み合う

秘密なんてなにひとつない顔をして
街の中を歩こう
もうひとつの名前があることなんて
思いもよらない顔つきが広がる

あなたにだけは教えてみたい
ぼくの本当の姿を
ぼくの本当の名前でぼくを呼んで
生まれて初めてあなたが呼んで

誰にも見せたことのない果実を
あなたが優しく触れるように
守りすぎて凍りついていたぼくは
自分でも本当の名前を知らないことを知る

 

 

 

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