昔のことだからなかったことにしてもいいのは本当か? 〜時効〜

 

ぼくはずっと憶えている。

昔のことだからなかったことにしてもいいのは本当か? 〜時効〜

・時間が経てば罪はゆるされる〜時効〜
・罪に時計の時間は流れない
・永遠に保存される罪
・自作詩「幽霊」
・いつまでもいつまでもぼくは罪を憶えている

・時間が経てば罪はゆるされる〜時効〜

時効というのは、人間社会の中の面白い制度だ。時間が経てば、犯した罪もなかったことにされてしまう。どんなに残酷な罪を犯しても、時間が経てばゆるされる。それはまるで法律がぼくたちに、罪というものは時間が経てば経つほどに忘れられ薄れゆくものであり、絶対的な罪などこの世に存在などせず、所詮時間の経過と共に消えてしまうほどの価値しかないものばかりなのだだと言っているような気がする。

ぼくたちは法律が指し示すように、時間が経つごとにすべての思い出を綺麗さっぱりなかったことにすべきなのだろうか。それはまるで人間たちが過去という時制を葬り去り置き去りにし、その代わりに未来という新品の時制を一から手に入れるようかのように、まさにそのようにして人生において時間と付き合っていけばいいのだろうか。

”時の流れにゆるされるなら
すべての罪は時の懐に 匿われて嗤っている
遠い昔の中に横たわり続けてる
訪ねたこともない寒い海が見える”

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・罪に時計の時間は流れない

罪というものが人の心を痛めつけ人の心に残っている限り、罪というものは決して時計の指し示す時間によって消滅したりしないだろう。時間というものは物質や肉体のすべてを等しく押し流し、流転させるものであるがゆえに、まるで物質や肉体から発生する罪や幸福などの概念も、時間により押し流されると考えられやすい。

確かにそれらは時間の影響を受けるだろう。しかしそれは決して肉体や物質に流れている、単純な時計の時間と同等ではあるまい。時に淀み、時に激流となり、またある時には全く流れないというような、時計とは全く別次元にある不思議な時間の形だろう。

人の心を痛めつけた罪は、時間の流れによって薄らぐことはあっても、彼らがその傷の痛みを覚えている限り、決していつの間にか知らないうちになくなったことにはならないだろう。ここに法律というものの誤りが存在しているのではないだろうか。しかしそもそも法律というものも、間違いだらけの人間という生物が作っているものなので所々誤っていて当然であると言える。

 

 

・永遠に保存される罪

遠い昔の罪を現在に呼び覚ませば、罪を犯した人間はもう昔のことなんだからいいじゃないかと白を切る。時には昔の罪を持ち出してくる人間に対して、しつこいなどと否定的な言葉を浴びせたりする。昔の罪というものが時計の時間に押し流されず、いつまでも目の前に立ち現れてくるという事実が、罪を犯した者にとっては都合が悪いのだ。

罪を犯した人間は法律を持ち出し、それを防御壁にして昔の罪を持ち出すことは野暮なことだと否定的な攻撃を仕向けてくるけれど、罪を受け傷を負った者たちには、そのような解釈が理解できない。心の傷は遠く浮世を離れ、時計とは全く別次元の時計を刻んでいく。次第にゆっくりと時は流れ、徐々に傷が癒されることもあるかもしれないし、時間が氷のように凍りつき、永遠をまとって二度と動き出さないこともあるかもしれない。宇宙に保存されるような、永遠の罪もあるのかもしれない。

この世で最も深い罪はゆるされないというのは本当か?

 

・自作詩「幽霊」

あなたがぼくに与えた恵みを
ぼくは永遠に憶えていよう
脳内ではない別の倉庫に
大切に記憶を匿っていよう

ぼくがあなたから受けた仕打ちを
ぼくは永遠に忘れないでいよう
この肉体が滅び去っても憶え続け
あなたの血を辿っても呼びかけよう

傷をつけた過去から
逃げ切ることができたと
安心しきったその顔に
罪の泥をなすりつけよう

思い出したくもない悲しみから
生まれくる憎悪も涙も
一度はなかったことにして
あらゆる炎を注ぎ込もう

時が経てばすべての罰など
なかったことにできるものだと
軽く嘯くその口元を閉ざして
涙の雨を流し込もう

どこまでもあなたを遡ろう
いつまでもあなたの幸福を砕こう
止むことのない永遠の記憶の流れが
津波となりあなたの息の根を止めるまで

 

 

・いつまでもいつまでもぼくは罪を憶えている

傷を負った者たちは、永遠に憶え続けているだろう。愚かな法律をも退けて、 虚しい時間を打ち破って。傷に時が流れないことを、彼らは誇りに思うだろう。永遠をまとった傷口を、遠い彼方であなたに見せよう。

傷をつけた者たちは時の流れを急かし続ける。早く罪がなくなるようにと、早くゆるされますようにと。傷ついた者たちは時空を知らない。いつまでもいつまでも憶え続け、果てしなく現在へと蘇らせよう。

何度でも蘇るものがぼくは好きだ。それがいくらしつこいことだと罵られようとも。どんなに時が経っても果てしなく蘇る、時を超越した姿がとても素敵だ。いつまでもいつまでも、ぼくは憶え続けていよう。ずっとずっと、ぼくは忘れないでいよう。法律や世界があなたの罪を、すっかりゆるしたと告げた後にも、ずっとずっと、ぼくは忘れないでいよう。

ぼくはぼくの、時だけを刻む。

 

 

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