他国を見下すことでしか保てない愛国心だけを、愛国心だと決めつけるのは危険だ。
愛国心は危険だというのは本当か？
・愛国心が危険だというのは本当か？
・他国を見下さなければ愛国心を保てないというのは本当か？
・愛国心の根本にある自己愛について
・自己愛とは誰かと比べるまでもない絶対的な愛情
・本来の愛国心は相対的ではなく、絶対的な愛であるべきだ
・愛国心は全て危険だから育てるべきではないという思想は、危険だ
目次
・愛国心が危険だというのは本当か？
自分の国を愛することを、愛国心と言うという。つまり日本人として生まれ育ったならば、日本が好きだという気持ちが愛国心だ。純粋に考えれば自分の属する集団のことを愛することは、人間として普通の当たり前の現象だと思われる。人間が自分の家族を好きですと言っても、自分の住む町を好きですと言っても、責められるということはほとんどない。
しかし「愛国心」となってくると話は違ってくるようだ。社会において愛国心という言葉には何か危険な思想を伴っている、いかがわしい雰囲気が漂ってくると見なされていることが多い。現に「私には愛国心があります」などとみんなの前で堂々と言うような人は少ないだろう。なぜだかわからないが愛国心という言葉には、何か怪しいような危険な香りを感じるから、あまり表立って愛国心を持っていることをわざわざ宣言しようとする人は少ないようだ。
しかしなぜ自分の国を愛するという人間として当たり前の気持ちが、「危険」なものだと社会では見なされているのだろうか。果たして愛国心というものは、本当に危険なものなのだろうか。
・他国を見下さなければ愛国心を保てないというのは本当か？
愛国心が危険だと社会で見なされる原因は、自分の国を愛するあまりに、愛国心の強い人々は他の国を嫌ったり憎んだり見下したりする傾向があるからだと思われる。確かにインターネット上でも日本に誇りを持ち、日本を愛していると主張する人々が、韓国や中国のことを嫌ったり、けなしたり、見下したりしている様子をよく見かける。そしてこのような憎悪の感情が拡大すれば、同じ人間同士なのに上手に付き合うことができなくなったり、最悪の場合戦争などが引き起こされてしまう可能性もあるだろう。戦争なんてもうまっぴらごめんだと思っている人が多い日本だからこそ余計に、愛国心というものは危険だと敏感に反応してしまうのかもしれない。
しかし繰り返すが自分の所属する集団を愛することは、人間として当然の現象だ。それなのにどうしてその当然の現象が、憎しみや戦争へと繋がっていくと危惧されるのだろうか。そもそも愛国心とは、韓国や中国などの他国を見下すことを指すのだろうか。愛国心の本質とは、一体何なのだろうか。
・愛国心の根本にある自己愛について
愛国心と言ってもあまりに壮大すぎるので、もっと小さな単位で思考していく方がわかりやすいだろう。愛国心を底の底まで辿っていけば、そこには人間として根源的な「自己愛」が横たわっていると思われる。人間にとっての愛国心の根本は、それぞれの個人の自己愛へと繋がっているはずだ。
この世に生きている限り、誰もが自己愛を持っている。誰もが心の底で自分のことを思いっきり愛してやっているからこそ、世の中でどんなに辛いことがあっても否定されてくじけそうになっても、立ち直って前を向き生きていくことができるのだ。自己愛とは人間が生きるための生命の源であり、これが欠如している人は自殺したり精神を病んだりして世の中でしっかりと地面を踏みしめて生きることが難しくなるだろう。
赤子としてこの世に生まれてきてから親の愛に包まれて、自分は愛されるべき存在なのだと強く確信することによって、人間は自分の根本となる自己愛を健やかに形成し始める。この自己愛こそが全ての人間の心の根源に横たわり、全ての人間の生きる力を支えている原動力である。自己愛はぼくたちが健やかに生きていく上で必要不可欠であり、決して否定されるべきものではない。
・自己愛とは誰かと比べるまでもない絶対的な愛情
自己愛とはどのようにして生じるものだろうか。自己愛とは、絶対的なものだ。他人と比べて自分の方が可愛い、自分の方が優れている、自分の方が素晴らしい、だから自分を愛そうなどという、相対的で浅はかな愛ではない。他人のことなんか関係ない、他人のことなんかどうでもいい、他人と比べるまでもなく、何があろうと無条件で自分は可愛いと慈しみ、ただひたすらに自分を愛してると思うことができる絶対的で揺るぎない心のことである。
他人と比べることで生じる愛なんて浅はかなものだ。それは他人に依存しているから他人次第ですぐに移ろい、薄らいだり、消えたりして心が迷ってしまうだろう。しかし無条件で絶対的な愛というものはただ自分だけを頼りとしているので揺らぐことがない。何があろうと灯火を絶やすことなく、ぼくたちに道しるべを与えてくれるのが絶対的な愛だ。ぼくたちの根源に位置し、人が生きる上で必要な自己愛という灯火は、この絶対的な愛に属している。
・本来の愛国心は相対的ではなく、絶対的な愛であるべきだ
自己愛を拡張した時に立ち現れる愛国心も、本来このように絶対的な愛であるべきではないだろうか。世の中でよく見られるのは相対的な愛だ。韓国は愚かだ、中国はダメだ、だからこそ日本は素晴らしいと、他者と比較することによってしか自分の愛を保てていない。そのような相対的で浅はかな愛を抱いているからこそ、愛国心は誤解され、危険な思想と結び付けられてしまうのではないだろうか。
自らの国を愛するためには、他国を見下さないと本当にいけないのだろうか。ぼくたちは誰と比較することがなくても、無条件で絶対的に自分を愛して大きな自己愛を抱けるように、まさにそのようにして自分が所属する大切な国に対しても、絶対的な愛を抱くべきではないだろうか。韓国が愚かだから日本が素晴らしいんじゃない、中国がダメだから日本が優れているんじゃない、他者のことなど見向きもしないで、浅はかに比較することもなしに、ただ自分の肉体と精神を生み育ててくれた日本という大地の美しさだけを見つめて、ただひたすらに無条件で愛することがぼくたちにはできるはずだ。周りのことなんて気にしないで愛する、他者のことなんてふり返らずに愛する、それこそが何の憎しみも生み出すことがない、本来の愛国心の姿ではないだろうか。
他国にも相対的な愛国心に支配されている人々が大勢いる。それゆえに世界は憎しみと妬みと争いで満たされている。現代の世界はあまりにも他国が見え過ぎて、比較することが容易過ぎて、相対的な愛しか抱けずに迷妄へと突入している。他者なんて気にしなければいいのに、比べなくてもそこに存在しているだけで十分価値があるのに、絶対的な愛国心の在処もわからずに人々は見下すことでしか自国への愛を見出せない。
本来の愛を思い出してみるべきだ。それは他人と比べることをする前から、他人と比べるまでもなく、無条件にただひたすらに自らを愛することができる絶対的な自己愛と同様だ。まさにそのようにして他国を憎むことをせず、他国を見下すこともせず、ただひたすらに自らの国を愛することができるはずだ。自分が優れていると思うためには、他人の愚かなことが必要だろうか。自分が可愛いと思うためには、他人が醜いことが必須だろうか。人間にとって自己愛とは、そんな軽薄なものではないはずだ。他人がどうであろうと、他人と比べて自分が上でも下でも、そんなくだらないことは一切関係なく、人は自分を絶対的に愛することができる。そのような無条件の愛を、国家へと拡張できる場合にのみ、平和というものは維持されるのではないだろうか。
・愛国心は全て危険だから育てるべきではないという思想は、危険だ
愛国心を持つ人々の中には、相対的な愛国心を抱く人もあれば、絶対的な愛国心を抱く人もいるだろう。インターネット上では韓国や中国を憎んだり見下したりする相対的な愛国心の主張がどうしても目立ってしまい、すべての愛国心がこのような種類のものであると世の中では見なされ、それゆえに愛国心は危険だという風潮が漂っているが、これは相対的な愛国心が目立っているだけの理由であって、人間が無条件で自分のことを愛せるように、誰と比べることも見下すこともない絶対的な愛国心を抱く人もこの国には多くいるのではないだろうか。
自分の所属する集団を絶対的に愛することはむしろ健全だし、微笑ましい。それはちょうど人間が自分のことを心の底ではひたすらに愛しているという、人間にとって根本的な風景と類似している。自分の肉体と精神を育んでくれた日本という大地に感謝し、そこに住む人々の風景や心模様、季節の移り変わり、そして美しい文化と大自然に興味を持ち、触れ、愛し、今を生きているぼくたちがそれをさらに深めるということは、まさにこの国に生まれついた者としてふさわしい姿勢ではないだろうか。
愛国心だからなんでもかんでも危険だ、愛国心を育てるべきではない、全ての愛国心なんか捨てるべきだと見なすのは、それこそ危険な思想である。愛国心の中にも憎しみや争いへと導かれる見下しの危険な思想と、ただ無条件で絶対的に国を愛しているだけの心にとって健全な思いがあることをきちんと見抜き、その上で心の豊かさや優しさへと繋がる本来の愛国心を安らかに育むべきである。
