相手が期待する言葉を返して生きればいいというのは本当か?〜中島みゆき「問う女」と「エコー」〜

 

みんなそれを平和と呼ぶのでしょう?

相手が期待する言葉を返して生きればいいというのは本当か?〜中島みゆき「問う女」と「エコー」〜

・「わたしってブスだから〜」と言う女性
・苦労話をやたらとしたがる人
・上司が部下に求めるものは従順な部品性
・真実の思いを閉じ込められなかった言葉たち
・中島みゆき夜会「問う女」と曲「エコー」
・嘘の言葉ばかりが洪水のように押し寄せる世界で

・「わたしってブスだから〜」と言う女性

「わたしってブスだから〜」と言う面倒くさい女性がたまにいる。そう言われた際にどのように答えるべきかは明白で、「そんなことないよ!可愛いよ!」と言えばいいのはお猿さんでもご存知であり、「わたしってブスだから〜」と言い放つ女性もそれを期待している。

まさか「おまえほんまにブッサイクやな〜!」とは口が裂けても言えないし、そんなこと言ってしまえばこちら側の人格を疑われるのは目に見えている。この場合「そんなことないよ!可愛いよ!」と返す以外の選択肢はほぼないのであり、相手もそう言われることにより自分はブスじゃないんだと安心して嬉しくなり平和な心を取り戻せるので、こちらが期待通りの答えを返すというちょっとした労働を行えば事は丸く収まるのである。

 

 

・苦労話をやたらとしたがる人

苦労話をやたらとしたがる人がいる。自分がどんなに大変な目に遭ってきたのかを、誰かにとても伝えたい種類の人間というものが存在する。そんな時、男性と女性では返答の仕方が大まかに異なってくるようだ。

”片付かない気持ちの話 男友達に打ち明ければ
答えや指示を急ぐあまりに なお散らかしてくれるばかりね
こんな夜中に必要なのは 普通にそばにいてくれること
確かにそれもありかもねって そばで思ってくれること”

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これは女同士の友情を歌い上げた中島みゆきの「ナイトキャップ・スペシャル」という歌の歌詞だが、この歌詞にもあるように何か相談事を持ちかけられた時、男性はその問題を解決しようと必死になる傾向があり、女性は共感し心に寄り添う傾向があるだろう。

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もしも苦労話をしたがる人が男性だった場合は、解決策を提案すればいいし、苦労話をしたがる人が女性ならば、共感を求めているのかもしれない。相手が男女のどちらかによって、大まかに対処の仕方が違うのがポイントだ。男性はこの違いをいまいち理解せずに女性を怒らせてしまうことが多いようだが、女性の気を引きたければ共感を重視するのがいいだろう。共感するというのは「うんうん」「わかる」「大変だったね」と頷けばいいので、思考をふり絞って解決策を考えるよりも楽ではある。女性が期待する答えを理解し男性が対応することで、喧嘩が起きなくなり世界は平和になりやすくなる。

 

・上司が部下に求めるものは従順な部品性

社会において上司が部下に命令を下した時、上司が部下に期待する答えは決まっている。「わかりました」と素直に命令に従い、おとなしく動き出すことを期待している。間違ってもそのやり方はおかしいと反論したり、嫌ですと断ることは許されない。儒教のしきたり的には、目上は絶対的な存在であり、それがどんなにおかしなことで理不尽で間違っていると感じられても、部下は「わかりました」と我慢して従順に行動することが望ましい。

上司にとって、自分で物事を考える思考能力を持った部下はわずらわしく、何も考えずにただ儒教的な観念に従って、おとなしく言うことを聞く都合のよい機械か部品か奴隷のように動いてくれることが望ましい。そのような異様な環境を作り上げる教えが、儒教の正体ではないだろうか。儒教は人間を”人”から”部品”へと転落させ、個人の幸福を求めるのではなくそれを踏みにじることによって集団の幸福を追求し続ける。

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しかし中学の頃から目上は敬うべきだと儒教的観念を押し付けられてきた日本の民族は、その怪しいカラクリに未だ気づかずに儒教的社会を稼働し続けている。自分が部品になるために、上司が激昂しないために、せっかく生まれてきた自分自身の感性を抑えつけて、社会的に期待され望まれている答えだけを返し続ける。「わかりました」と。

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・真実の思いを閉じ込められなかった言葉たち

しかし期待された答えを解き放つことだけが会話の成り立ちだろうか。ぼくたちには期待された答えがあり、決まり切った定型文があり、それらを交わすことだけで人間同士の心が本当に伝わっているのだろうか。本当にそのコミュニケーションには、ぼくたちの心が、思いが、伝えたい気持ちが、その熱量が含まれているのだろうか。

「ありがとうございます」と言うべきだからそう思ってもいないのに口から出てしまう「ありがとうございます」。「申し訳ございません」とは微塵も思っていないのに言わなければ社会的に抹消されそうだから解き放つ「申し訳ございません」。別にそんなことは大して感じていないけれど定型的に書くべきと決められているから紹介文で冒頭に付け加える医者の「平素より大変お世話になっております」

これらの言葉は世界を平和にする。社会的に期待された言葉たちを投げかけることによって、思いなど込められなくても込められているように見せかけることによって、人間関係や社会は円滑に稼働していく。社交辞令や決まり文句や定型文は、ぼくたち人間が良好な関係を築き上げるために作られた潤滑油だ。

しかし言葉というものは、そのように思いも込められないまま、真実の心を受け止めないまま、世界へと発信されるために作られたものだろうか。

 

 

・中島みゆき夜会「問う女」と曲「エコー」

”聞きたいことは何ひとつない
問いたいことは何ひとつない
聞きたいことは何ひとつない
問いたいことは何ひとつない

有無を言わせず送り続ける
返事を受けないダイレクト・メール

悪意は満ちている
目を合わせると危なくて
悪意は満ちている
目を合わせると危なくて

みんなそうして生きるものじゃないの
だからみんな生きていられるのでしょう
それをみんな平和と呼ぶのでしょう
みんなそれを目指してきたのでしょう

エコーだけに話し続ければ時はゆく
エコーだけに答え続ければ時はゆく”

この歌詞は中島みゆきの夜会「問う女」で披露されたオリジナルの新曲「エコー」である。夜会「問う女」の主人公の職業はアナウンサー。言葉を毎日湯水のように使い消費する彼女にとって、言葉とは誰も彼もに対して”NO”を突きつけるための頑丈な城壁であり、そのための単なる道具に過ぎなかった。彼女は言葉を扱う職業であるにも関わらず、自分の言葉を発することはなく、ましてや言葉に自分の思いや伝わってほしいという願いを込めることすらなかった。ただ上から命令された通りに、権力者の思惑通りに喋る単なる媒介としてのスピーカーの役割を担っているに過ぎなかったのだ。

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しかしそんな彼女が「26000円」と名乗るタイ人娼婦と出会うことにより、彼女は本来の言葉の意味を取り戻してゆく。日本の言葉を話せないタイ人娼婦によって言葉の真実を告げられるという話の構成は、矛盾に満ち溢れているように見えるからこそその先に真実の光が宿っている。

 

 

・嘘の言葉ばかりが洪水のように押し寄せる世界で

ぼくたちは嘘をついてはいけないと子供の頃から教えられる。けれど言葉というものはいつも嘘をはらんでいるのだと大人になるたびに思い知らされる。嘘の「ありがとうございます」、嘘の「申し訳ございません」、嘘の「平素より大変お世話になっております。」。どれもこれも人間の心にそぐわない嘘であるのに、人間はこれらの嘘を尊く思い、積極的に使用することが推奨され、社会と人間関係を平和へと導いてくれることを信じている。

嘘の言葉ばかりが洪水のように押し寄せる世界。そのような泥の世界にまみれながらも、自分だけはひとつの美しい”真実”の蓮の花を咲かせようと願う者もこの世にはいるだろうか。共にゆける者はあるだろうか。

「嘘はいけない」と大人たちから教えられた人間の世界の正体は、嘘の牢獄だった。ぼくたちが願っていた平和な世界の正体は、嘘という砂で構成された楼閣だった。人間が集団として、社会として発展し、生き抜き、未来へと遺伝子を残すためには、誰もが嘘という穢れに侵されなければならなかった。そのような平和を、ぼくたちは望むだろうか。嘘に沈められなければ平和を果たせない虚しき人の世を退いて、部品から全体へと帰還し、真実の平和をこの心だけに生み出す瞬間が、もうそこまで来ている。

 

 

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