経費で節税可能?医師アルバイトは報酬受取の業務委託契約にすれば確定申告時に青色申告できるというのは本当か?

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医療行為なのに業務委託契約として事業所得で青色申告していいのかな?????

経費で節税可能?医師アルバイトは報酬受取の業務委託契約にすれば確定申告時に青色申告できるというのは本当か?

・コロナワクチンバイトで唯一大阪市だけは「業務委託契約」の「報酬」として賃金を支払った
・「雇用契約」で受け取るのは「給与所得」で、節税はほぼ不可能
・「業務委託契約」で受け取るのは「報酬」であり、経費や青色申告で節税が可能
・医療行為を行う限り医師バイトは「給与所得」だと結論が出ている
・「業務委託契約による報酬」ではなく「雇用契約による給与」だと裁かれた麻酔科バイト医の事例
・どのような観点から麻酔科バイト医は「雇用契約」だと判断されたか
・麻酔科バイトが「雇用契約」だとされた根拠まとめ
・ぼくのコロナワクチンバイトの業務内容は果たして業務委託契約に当てはまるのか

・コロナワクチンバイトで唯一大阪市だけは「業務委託契約」の「報酬」として賃金を支払った

ぼくは2021年6月〜12月に渡って、コロナワクチンバイトに従事してきた。自由に旅するように日本全国どこでも働けるのがコロナワクチンバイトの魅力であり、これまでに大阪府、奈良県、兵庫県、広島県、東京都、千葉県、群馬県、北海道など様々な場所で労働した。

コロナワクチンバイトでもらえるお金は基本的には「給与所得(給与、お給料)」であり、日本全国どこで働いてもぼくが受けとるのは「雇用契約」に基づく「給与所得」だった。

しかし数多ある職場の中でもたったひとつだけ、ぼくに「雇用契約」に基づく「給与所得」ではなく「業務委託契約」に基づく「報酬」としてお金を支払っていた場所がある。それが大阪市である。

 

 

・「雇用契約」で受け取るのは「給与所得」で、節税はほぼ不可能

「雇用契約」と「業務委託契約」はどう違うのだろうか。

「雇用契約」とは民法623条により定義されている労働供給契約の1つ。 具体的には、雇われる側(労働者)が雇う側(雇用主)に使用されて労働に従事し、雇用主はその労働に対して労働者に賃金を与える約束をする契約のことである。要するにサラリーマンや会社員、病院で働いている医師など、企業や組織に雇われながらお金をもらって生活している一般的な人々は、この「雇用契約」を結んでいると言えるだろう。

「雇用契約」においては、雇用主と労働者の間に命令や指示などある程度の拘束力(使用従属性)が生じることが特徴だ。また「雇用契約」を締結した労働者は、労働保険や社会保険の加入や有給休暇の取得、使用者からの一方的な解雇の禁止など、労働法上の様々な保護を受けることができるというメリットがある。

「雇用契約」によって受け取る賃金は「給与所得」となり、仕事のために使ったお金を経費として計上し、節税することは基本的にはできない(特定支出控除などはあり)。お給料をもらっているサラリーマンが基本的には経費で節税できないことを知っていれば納得されるだろう。コロナワクチンバイトをしていた医師のぼくも、大阪市以外からもらっていたのは全て「雇用契約」による「給与所得」なので、ワクチン接種会場へ行くために飛行機代往復30000円がかかろうが、宿泊費10000円が掛かろうが、それを経費として計上し節税することは不可能だという理屈になる。経費を使って節税できないのは「雇用契約」のデメリットだと言えるだろう。

 

・「業務委託契約」で受け取るのは「報酬」であり、経費や青色申告で節税が可能

一方で「業務委託契約」では、「雇用契約」のような命令や指示などの使用従属性を生じさせることはなく、あくまでも独立した個人と個人が契約を交わすという仕組みになっている。自分のところでは対応できない業務を、他社やフリーランスなどの個人といった外部に任せようとする契約だ。したがって仕事を請け負った側は労働者ではないため、労働基準法など法律の保護を受けることができないというデメリットがある。

「業務委託契約」で支払われるお金は、「給料」ではなく「報酬」となる。もらうのが「給料」ならそれは「給与所得」となり、経費を使った節税はほぼ不可能となるが、「報酬」の場合は「雑所得」もしくは「事業所得」となるので、経費を使った節税が可能となる。これは大きなメリットだと言えるだろう。また個人事業主として開業届を提出した上で、確定申告時に青色申告として提出すると10万円もしくは65万円の控除が可能となる。これも大きなメリットだ。

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・医療行為を行う限り医師バイトは「給与所得」だと結論が出ている

それならば大阪市がぼくのコロナワクチンバイトに対して「業務委託契約」とし「報酬」を払ってくれているのならば、節税の点でメリットが大きいのでとてもいいことではないかと思われがちとなるが、事態はそう単純ではない。

ぼくが以前から熱心にインターネット上で調べてみたところによると、フリーランスの医師がどんなにバイトを頑張ったところで、医療行為をしている限りそれは「給与所得」にしかならないという結論が出ているからなのだ。どこの病院にも属さないフリーランスの医師が自らの手でバイトの案件を勝ち取ったことにより稼いだお金ならば、自分の力だけで稼いだ「事業所得」として認められそうなものであるが、過去の裁判の判例から、医師が医療行為を行う限りそれは「給与所得」にしかならないことはどうやら確定らしい。

もしもぼくが大阪市の「業務委託契約」で「報酬」を支払っているという主張を間に受けて、後になって税務署からあなたのは「雇用契約」による「給与所得」ですなどと指摘されてしまえば、節税のための経費を計算する手間や、青色申告65万円控除を受けるために複式簿記を付けた苦労が水の泡となってしまう。確かに大阪市からの書類には支払われるお金は「報酬」と明記されているものの、契約書に「業務委託契約」と書かれていたからといってその業務内容が「業務委託契約」らしくなかったと判断されたならば、契約書がどうであろうと「雇用契約」による「給与所得」として税金を支払うように後から指摘される可能性は十分に存在しているという。そのような事態はどうしても避けたい。そのためには過去の具体的な裁判の事例を参考に熟考するしかないだろう。

有名なのは病院と「業務委託契約」を結んでいた麻酔科医のバイトの事例だ。その麻酔科医は自分がもらっているのは「業務委託契約」に基づいた「報酬」なので、「事業所得」として節税した形で確定申告を提出した。しかし税務署にこれは「給与所得」だと指摘され、最終的には裁判まで起こしたが、結局麻酔科医のバイトは「業務委託契約」による「報酬」だとは認められずに「雇用契約」による「給与所得」だと判断され、余分な税金を支払う羽目になってしまったという悲劇的な顛末となったようだ。

ではこの麻酔科医の事例では、どのような点に着目され、彼は「業務委託契約」ではなく「雇用契約」だと判断されてしまったのだろうか。それを研究し拡大適応させることで、今現在バイトに勤しんでいる医師が、自分のもらっているお金は「給与(給与所得)」なのか「報酬(事業所得)」なのか、はたまた自分の仕事が「雇用契約」に基づいているのか「業務委託契約」に基づいているのかを知る大きなる手がかりになることだろう。

 

・「業務委託契約による報酬」ではなく「雇用契約による給与」だと裁かれた麻酔科バイト医の事例

麻酔科医の具体的な事例はまとめると以下の通りとなる。

麻酔科医であるX(原告)は、各病院から得た収入が「事業所得」に当たることを前提として、平成17~19 年分の確定申告を行なった。しかし税務署長は「給与所得」に当たることを理由に、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。異議申立てを経て、X は審査請求をしたが、平成22年9月6日付けで棄却(前記減額部分は却下)された。

ではどのような観点から、麻酔科医のバイト収入は「報酬(事業所得)」ではなく「給与(給与所得)」と判断されたのだろうか。

 

・どのような観点から麻酔科バイト医は「雇用契約」だと判断されたか

裁判では「営利性や有償性を有し反復継続して行われる業務ないし労務提供という経済的活動から得られる収入が事業所得に該当するか給与所得に該当するかは、自己の計算と危険によってその経済的活動が行われているかどうか、すなわち経済的活動の内容やその成果等によって変動し得る収益や費用が誰に帰属するか、あるいは費用が収益を上回る場合などのリスクを誰が負担するかという点、遂行する経済的活動が他者の指揮命令を受けて行うものであるか否かという点、経済的活動が何らかの空間的、時間的拘束を受けて行われるものであるか否かという点などを総合的に考慮して、個別具体的に判断すべきである」とした上で、以下のように具体的な個別考察がなされている。

(ア)「病院からXに支払われる報酬について」、Xに対して「術例数が1例であっても2例であっても定額の報酬が支払われ,手術の件数が3例以上に増えたり時間が2時間を超過した 場合には、それぞれ割増された報酬が支払われるものの、手術や麻酔施術の難易度や用いる薬剤等の価格などに応じて変動する仕組みにはなっておらず、医療行為等に対する対価として患者や公的医療保険か病院に支払われる診療報酬の金額の多寡に応じて原告に対する報酬が変動する報酬体系にはなっていない」。

(イ)「麻酔業務から生ずる費用等の帰属について」、「麻酔業務から生ずる費用は、基本的 に病院が負担しており、Xは、たとえば高額の麻酔機器を購入することによって生じる費用(減価償却費)が麻酔業務から生じる収益を上回るなどして麻酔業務による損益計算が赤字になるというような事業の収支から一般的に生じ得る危険を負担することはない」。

(ウ)「指揮命令」について、担当患者や手術の時間・場所等について「病院によって他律的に決定されていたこと」等を挙げ、Xは「病院の指揮命令に服していた」。

(エ)「空間的、時間的拘束」について、勤務時間が木曜・金曜と契約で定められていたこと、場所も病院内であったこと、出勤簿で出勤・退勤時刻が管理されていたことを挙げ、 「空間的、時間的拘束に服していた」。

別の7病院からの収入についても同様の当てはめを検討し、何れも給与所得該当と判断した。 X側の「高度の専門性」等の主張について、「業務遂行に必要な様々な判断等を他者の指揮命令によることなく『独立して』行うからといって、ここにいう『独立』性が認められ、事業所得とされるわけではない」こと、「国会議員や裁判官など、職務遂行に必要な判断等については、他者の指揮命令に服することなく独立して行っている職種についても……報酬は給与所得とされている」こと等を指摘した。

 

・麻酔科バイトが「雇用契約」だとされた根拠まとめ

なんだか難しいが簡単にまとめると

(ア)報酬の基準が結果基準か時間基準か
(イ)機械、器具、原材料の負担がどちらにあるか
(ウ)業務内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無
(エ)勤務場所・勤務時間の拘束性の有無

について考察していると思われる。この麻酔科医の事例については

(ア)報酬の基準が時間基準だったから雇用契約らしい
(イ)機械、器具、原材料の負担が病院側にあったから雇用契約らしい
(ウ)業務内容及び遂行方法に対する指揮命令があったと考えられるので雇用契約らしい
(エ)勤務場所・勤務時間の拘束性があったので雇用契約らしい

と判断されたようだ。ではこの事例を実際に自分の大阪市のコロナワクチンバイトに当てはめて考えてみるとどうなるのだろうか。

 

・ぼくのコロナワクチンバイトの業務内容は果たして業務委託契約に当てはまるのか

(ア)医師としてどんなにたくさんの人々の問診をしても、判断が難しい接種者の問診をしても、またどんなに多くの人々の経過観察をしても、その経過観察中にどんなに救急対応の難しい重症の人が出ても異常を生じる人がひとりも出なくても、同じ時給17500円として支払われる。したがって結果基準であるというよりもむしろ時間基準の賃金が支払われていると思われる。雇用契約らしい?

(イ)業務に関わるワクチンや必要な器具はもちろんのこと、医師が着用するガウンやビブス、聴診器や血圧測定器やパルスオキシメーター、救急に必要な用具や薬品についてまで全て大阪市によって準備されている。したがってこの点では明らかに雇用契約らしい。

(ウ)医師の業務内容は主に問診と経過観察の2つがあったが、問診業務を行うか、経過観察業務を行うか、その決定権は完全に大阪市にあり、医師はどちらを行うかの希望を聞かれることさえなかった。その点から言えば、業務内容に関する指揮命令があったと言える可能性はあるだろう。また問診の際にこの部屋を利用するように、この看護師と組むようになどの細かな指示も大阪市が出し、医師が決めることはできなかった。さらに言えば接種会場で何かトラブルが生じた際も、まずは大阪市職員に相談して意見や指示を受けるシステムになっていた。したがって雇用契約らしい。

(エ)業務の場所、時間帯に関しては、医師側はいつ・どこで業務が可能かをあらかじめメールで尋ねられはするものの、医師が積極的にこの場所・この時間でぜひ従事したいからと自力で決定することは決してできず、結局は大阪市という他力によって決定されていた感は否めなかった。また医師がきちんと会場に来たか、何時に来たかなどは、大阪市の職員によってしっかりと管理されていた。したがって大阪市による勤務場所・勤務時間の拘束性は存在し、雇用契約らしいように思われる。

 

・ぼくの大阪市コロナワクチンバイトってめちゃくちゃ雇用契約っぽくない???

したがって麻酔科医の過去の判例を見ていると、自分の大阪市のコロナワクチンバイトの業務内容がどうしても業務委託契約ではなく、雇用契約のように見えてしまうが気のせいだろうか。他にも通常予定されている業務以外に携わることがあったり(本来経過観察だったのに急遽問診に変わることもあり)、代替性がないなど雇用契約らしい事例も目立つ。一方で退職金制度、福利厚生制度がないなど、業務委託契約らしい側面も確かにあり悩ましい。

果たして本当に、大阪市が「業務委託契約」だと主張しているからといって、それを信じ込んで、経費を全て計算し、複式簿記で帳簿を作成し、65万円控除で確定申告を提出するという大きな手間をかけても大丈夫なのだろうか。後からやっぱりこれは「給与所得」ですなどと税務署に指摘されて損害を被る羽目になっても、「業務委託契約」だと主張した大阪市が丁寧に責任を取ってくれるなどとはとても思えない。

 

 

・わからないので税務署に電話で直接聞いてみた

素人が考えていても埒があかないので、2021年12月27日11時3分に直接税務署へ電話してみることにした。ぼくが医師であること、コロナワクチンバイトをしているということ、大阪市が雇用契約ではなく業務委託契約として、給与ではなく報酬として賃金を支払っていること、しかし過去に麻酔科医が業務委託契約からの事業所得として青色申告して税務署から指摘され給与所得として税金を払い直させられた事例があるので本当に大阪市の言う業務委託契約を信じていいのか不安なことを説明した。

結論から言うと、電話口のおじいさんによれば、大阪市が業務委託と言っているのならばそれで青色申告してもらっても税務署的には何の問題もないということだった。税務署の人が問題ないというのならもうそれを信じるしかないということで、大人しく経費を計算し65万円控除の複式簿記を完成させようと思う。10万円控除の簡易簿記なら自分でできると思っていたけれど、65万円控除の複式簿記となるとかなり難しそうなので税理士さんに頼むしかないのかなぁ。

 

 

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