鬼滅の刃の善悪観を徹底考察!何の罪もない人々を食い殺すから鬼は殺すべき悪人だというのは本当か?

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何の罪もない人々を食らうから、鬼は殺すべき悪人だろうか。

鬼滅の刃の善悪観を徹底考察!何の罪もない人々を食い殺すから鬼は殺すべき悪人だというのは本当か?

・アマゾンプライムで初めて「鬼滅の刃」を鑑賞した
・「何の罪もない人をこんなに殺して許せない」という怒りと原動力
・何の罪もない人々を殺すから鬼は殺すべき悪人だというのは本当か?
・人間は鬼の食べ物だから人間を食べる
・ぼくたち人間はまさしく鬼そのものである
・自らの残酷さを悔いて「いただきます」と唱える日本語の尊さ

・アマゾンプライムで初めて「鬼滅の刃」を鑑賞した

先日「鬼滅の刃」というアニメをアマゾンプライムで1クール全話鑑賞した。子供たちに大人気だというから見てみたが、可愛いキャラクターからは予想もできないほど、あまりにも血みどろな物語なのでびっくりした!確かに面白いけれどこんなに毎回血が出てきたり、首とが肉体が引き裂かれたりして、子供達は怖くないのだろうか。こんなの見て夜中トイレに行けなくなってしまうのではないかととても心配だ!

 

・「何の罪もない人をこんなに殺して許せない」という怒りと原動力

「鬼滅の刃」の物語は単純明快であり、主人公の炭治郎が人を食う鬼たちを次々にやっつけていくという内容だった。山の中で家族みんなと幸福な生活を営んでいた炭治郎だが、ある日町に炭を売りに行っている間に母親や兄弟などほとんどの家族を鬼に食い殺され、唯一生き残った妹の禰豆子も鬼になってしまった。鬼に家族と幸せな生活を奪い取られた悔しさと、鬼を倒して禰豆子を人間に戻す方法を知りたいという思いが、炭治郎の鬼をやっつける行動の原動力になっている。

炭治郎はよく鬼をやっつける前の動機付けとして「何の罪もない人をこんなに殺して許せない!」という鬼への怒りを抱いている。また炭治郎の師匠である鱗滝左近次は炭治郎に対して「人間は皆、お前の家族だ。人間を守れ。鬼は敵だ。」と言及している。しかし何の罪もない人々を殺しているからと言って、鬼を全て敵とみなし、憎しみのままに撃ち殺しても本当にいいのだろうか。

 

 

・何の罪もない人々を殺すから鬼は殺すべき悪人だというのは本当か?

確かに人間的観点から言えば、何の罪もない人間を食い殺すなんて最低最悪の行為だし許されることではないだろう。自分の家族が何の罪もない家族をさらわれて殺されたら絶対に憎しみを抱くだろうし、ましてや自分がそんな目に遭ったなら死んでからも鬼を呪いたくなるだろう。何の罪もない人間を傷つけることすら、人間の世界では倫理的、道徳的に許されることではない。むやみやたらと人間を食い殺す鬼は当然のように”悪者”だと見なされ、それをやっつける主人公の炭治郎は正義のヒーローとして人の世で君臨することだろう。実際に今の日本でも、炭治郎は子供達から絶大な人気を得ている。

けれど「鬼滅の刃」の物語の中で、鬼は罪もない人を殺すからこそ許せないという観念が一貫して横たわっていることにぼくが違和感を覚えるのは、人間だって鬼と同じことをしているじゃないかと思うからだ。

 

・人間は鬼の食べ物だから人間を食べる

鬼が人間を食らうのは、人間が栄養価の高い食べ物だからだという。全ての鬼は元は人間だが、飢餓状態になった鬼は親でも兄弟でも殺して食べるという。つまり鬼の主食は人間なのだ。鬼はお腹が空いたときに食べ物を食べたいから、人間を殺して食べているのだ。

これのどこが人間と違うというのだろうか。ぼくたち人間も、自分がお腹が空いたからと言って、牛さんや豚さんや鶏さんを殺してはムシャムシャと食べている。もちろん牛さんや豚さんや鶏さんは何の罪も犯してはいない。何の罪も犯していないが、ただお腹が空いたからと殺してムシャムシャと食べているだけだ。これって「鬼滅の刃」の中の鬼と全く同じではないだろうか。

鬼だってお腹が空いたから、栄養が欲しいから人間をムシャムシャと食べるのだ。ぼくたちはそのことを人間だからひどいとか残酷だとか非道だとか思い込んでしまうが、お腹が空いたからと言って何の罪もないものを殺して食べるということは、人間含め全ての生物がやっていることではないか。自分たちだって何の罪もない牛さんや豚さんや鶏さんを殺してムシャムシャと残酷に食べているくせに、人間をムシャムシャと食べる鬼だけを悪者として成敗することで正義の味方になれるだなんて、全くの見当違いな価値観ではないだろうか。

 

 

・ぼくたち人間はまさしく鬼そのものである

牛さんや豚さんや鶏さんからすれば、まさにぼくたち人間こそが極悪非道な「鬼」である。ぼくたち人間の中に、絶対的に鬼は潜んでいるのだ。「鬼滅の刃」の中の鬼を悪人だと見なすならば、ぼくたち自身も紛れもない悪人だと自覚すべきだろう。お腹が空いたからと罪もない人間たちをムシャムシャと食べている「鬼滅の刃」の中の鬼の姿は、まさしくお腹が空いたからと罪もない牛さんや豚さんや鶏さんをムシャムシャと食べているぼくたち人間の姿と一致し、ピッタリと重なる。

炭治郎の師匠の鱗滝左近次が言うような「人間は皆、お前の家族だ。人間を守れ。鬼は敵だ。」という思想は危険である。人間=味方、鬼=敵だと西洋的な二元論でこの世の中を簡単に片付けようとすることで矛盾が生じる。空腹により罪なき者を殺して食らうという点からいえば、人間は鬼でもあり、鬼は人間でもあり、鬼と人間との間に明らかな境界線など引けるわけがない。人間と鬼の境界線なんて曖昧なのだから、鬼が家族となり、人間が敵となることだって十分にあり得る。この世はふたつに綺麗に分けられるほど単純ではないのだ。人間は鬼であり、鬼は人間であるという、区別のつけられない混沌な東洋的な世界においてこそ、真実の光は見つかるだろう。

 

 

・自らの残酷さを悔いて「いただきます」と唱える日本語の尊さ

ぼくたち人間はまさに鬼である。ぼくたち人間は残酷で、非道で、悪人だ。しかしだからと言って自らを苛み、生きるのをやめてしまおうと嘆くことはない。ぼくたちが残酷で、非道で、悪人であることは、生きていく上で仕方のない、どうしようもない運命だからだ。ぼくたちははじめから、残酷で、非道で、悪人になるような定めを受けて生まれてきたのだ。

ぼくたちは日本人として生まれて幸福である。このような罪深い”食事”という行為の罪を浄化するために、日本人は食事の前にまじないの呪文を必ず唱える。それは「いただきます」という言葉だ。何の罪もない命たちを、残酷に奪い、食らう。ぼくたちは申し訳なくも、尊い命をいただいている。だからこそ日本では「いただきます」というのだ。

奪い取ることでしか命をつなげなくとも、どんなに罪深くしか生きられなくても、尊い命をいただくことで、尊い命を必死で繋いでいくという宣言。「いただきます」という呪文を唱える国に生まれて、ぼくは幸福だと感じる。多くの国を旅してきて、ぼくは他の国で「いただきます」のような意味合いの呪文に出会ったことがない。まさに日本人が生命と必死に向き合って生きてきた誇らしい証ではないだろうか。

 

 

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