インド起源で中国から空海が持ち帰ったけれど…不動明王は日本とチベットにしかないというのは本当か?

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不動明王って日本とチベットにしかいない?!?!?

インド起源で中国から空海が持ち帰ったけれど…不動明王は日本とチベットにしかないというのは本当か?

・日本でよく見かける怒りに燃えた不動明王像
・不動明王はインド起源で、空海によって中国(唐)よりもたらされた
・世界を旅して、ぼくは不動明王的な感性を日本とチベット文化圏にしか見出さなかった
・不動明王は日本とチベットにしかないというのは本当か?
・アチャラ(日本の不動明王)とチャンダマハーローシャナ(チベットの不動明王)の違いとは?
・日本人とチベット人はよく似ている

・日本でよく見かける怒りに燃えた不動明王像

日本を旅していると、しばしば不動明王の像に遭遇する。普通仏像というのは穏やかで安らかなお顔をしているのに、不動明王というのは背中に赤々と炎を燃え盛らせ怒りの表情をしているので特徴的でとてもインパクトがある。ぼくは喜怒哀楽の中で怒りを最も美しいと思うような感性の人間で、不動明王の怒りと自分の根源に燃え盛っている炎が共鳴するような気がするので不動明王にとても心惹かれながら生きている。

日本各地でよく見かける不動明王だが、どのような経緯で日本で作られるようになったのだろうか。

 

 

・不動明王はインド起源で、空海によって中国(唐)よりもたらされた

不動明王の起源はインドにあるという。古代インドで民間信仰されていた夜叉(薬叉)という精霊神から派生して、5〜6世紀に不動明王として信仰の対象になったと言われている。日本へ不動明王を持ち込んだのは、唐の長安に留学していた空海(弘法大師)である。806年に唐より帰国した空海が、明王に関する経典を持ち帰ったとされている。空海の元、京都の東寺講堂に不動明王を中心として大威徳、降三世、軍茶利、金剛夜叉を配した五大明王像(国宝)が作られ、これが現存する最古の明王像であるという。

 

・世界を旅して、ぼくは不動明王的な感性を日本とチベット文化圏にしか見出さなかった

以上の説明は本に書いてあった内容だ。不動明王の起源や伝来の経緯なんて、生まれるよりもはるか前の古代の出来事なのだから本で読むしかない。つまり不動明王はインドで発明され、空海が唐の長安から持ち帰ったということだ。しかし世界一周の旅をしてアジア中を旅したぼくからすればなんだか違和感が残る説明だった。というのも不動明王のような仏像を日本以外では見たことがなかったからだ。

仏教は日本を含むアジア全体で広く信仰されている。それゆえに東アジア、東南アジア、南アジアの様々な国々で仏像を見ることができた。しかしそれらは全て穏やかで安らかな顔をした「普通の仏像」であり、不動明王のように怒りに燃え盛る仏像を見ることは全くなかった。不動明王をはじめとした憤怒の表情をした明王像は、日本に特有の世界でも特別なものではないだろうか。

不動明王のように怒りに燃えている神様を異国でも見つけた唯一の例は、チベット文化圏だった。チベットでは背中に怒りの炎をまとった憤怒の表情の神々が、寺院の壁画として描かれていることが多かった。稀に背中に炎を燃え盛らせた憤怒像を見かけることもあった。その姿はまさに日本の不動明王との関係を予感させるが、何となく不動明王とは似ても似つかない異質の異国情緒を感じさせた。チベットの憤怒像はまさに人間ではない異形の神という感じがし、日本の不動明王はもう少しリアルで人間っぽい顔立ちであるように思われた。

ぼくの旅の実感では、不動明王のような憤怒の仏像は日本とチベット文化圏にしかないという印象だった。果たしてそれは正しいのだろか。

 

・不動明王は日本とチベットにしかないというのは本当か?

本やインターネットの情報によるとどうやらそれが正しいようだった。ウィキペディアには「インドで起こり中国を経て日本に伝わった不動明王であるが、インドや中国にはその造像の遺例は非常に少ない。」と書かれいる。また不動明王の本にも「不動明王はインドではあまり活躍の場がなくほどなく消え去った、その代わりチベット密教で活躍の場を見出した」と書かれている。やはりぼくが世界の旅で実感したように、不動明王が生き残っているのは日本とチベット文化圏だけのようだ。

インドで発明されたにもかかわらずインドでは生き残らず、東国の島国の日本で最も盛んに信仰されているなんてとても不思議な現象だ。しかし古代でインド、チベット、中国、日本と次々に旅を続けているうちに姿形も変わり、発想としてはインドが起源かもしれないが、それが日本の感性と混じり合い、世界のどこでも見かけない独特な怒りの仏像の文化圏を日本は形成しているように思われる。

 

・アチャラ(日本の不動明王)とチャンダマハーローシャナ(チベットの不動明王)の違いとは?

生まれ故郷のインドでは、不動明王は2種類の姿があったという。それが「アチャラ(動かざるものという意味)」と「チャンダマハーローシャナ(恐ろしく大いに怒れるもの)」の2つである。日本の不動明王はアチャラに属しており、チベット密教の不動明王はちゃんダマハーローシャナ系統だという。その2つの違いとは何だろうか。

歴史としては6世紀頃にアチャラが出現し、やや遅れてチャンダマハーローシャナが出現した。アチャラの姿勢としては堂々と座っているのが特徴で、チャンダマハーローシャナは右の足を曲げ、左の足を伸ばす「展左」のポーズが特徴的だという。しかしポーズが明らかにチャンダマハーローシャナなのにアチャラと呼ばれている例も多数あり、あまり厳密ではないとされている。

不動明王は最初「不動使者」と訳され、大日如来の使い走りのような役割だった。チャンダマハーローシャナのポーズはまさに走っているような印象で、使い走りだった頃の不動明王を彷彿とさせる。現在の日本では、不動明王は大日如来の化身として、使い走りではない高い地位を得ていると考えられる。

 

 

・日本人とチベット人はよく似ている

ぼくは不動明王にも心惹かれるが、輪廻転生の思想を持つチベット仏教の感性にも強い関心と共鳴を抱いている。日本人とチベット人は顔立ちも非常によく似ているし、世界中で日本人とチベット人にしかない特有のハプログループDというY染色体も存在しているようだ。怒りに燃え盛っている独特な仏像が世界中のこの2つの地域だけで生き残っているのも、遠く離れながらも何かしら底通するものがあるという暗示なのだろうか。ぼくはもっとチベット文化圏を自分の足で旅して、これからもどんどん理解を深めていきたい。

 

 

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