ドラえもん「ぼくの生まれた日」の違和感!社会の役に立たない人間は、価値のない欠落した存在だというのは本当か?

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パパ「何でもいい、社会のために役立つ人間になってくれれば!」

ドラえもん「ぼくの生まれた日」の違和感!社会の役に立たない人間は、価値のない欠落した存在だというのは本当か?

・ドラえもん映画「ぼくの生まれた日」にぼくが昔から感じていた違和感
・「ぼくの生まれた日」のあらすじ
・「ぼくの生まれた日」でぼくが昔から大きな違和感を持っている場面
・人間は何でもいいから社会のために役立てばいいというのは本当か?
・社会の役に立たない人間は、人間として価値のない欠落した存在だというのは本当か?

・ドラえもん映画「ぼくの生まれた日」にぼくが昔から感じていた違和感

ドラえもんの映画に「ぼくの生まれた日」という作品がある。30分の短編映画でいわゆる”感動映画枠”であり、2002年に「のび太とロボット王国」と同時上映された。ぼくは昔映画館でこの「ぼくが生まれた日」を鑑賞して以来、ずっと疑問に思い違和感を感じている場面があるので、今回の記事ではそれについて考察していこうと思う。

考察の前に「ぼくの生まれた日」のあらすじを見ていこう。

 

 

・「ぼくの生まれた日」のあらすじ

「ぼくの生まれた日」では、のび太の誕生日である8月7日にのび太が浮かれている場面から物語が始まる。のび太は両親が何をプレゼントしてくれるのだろうと期待ばかりしているが、その逆に勉強しないことで両親からいつも以上にこっぴどく叱られ「うちの子じゃありません!」などと言い放たれてしまう。よりにもよって誕生日にそんなひどいことを言われたことから自分は愛されていないと絶望し、家出を決意するのび太。リュックを背負い近所をウロウロする。

そこへ心配したドラえもんがのび太の様子を見にくる。のび太はまだ拗ねたままで「ぼくなんか生まれてこなければよかったんだ!」「今日はぼくが生まれてみんなががっかりした日なんだ!」と信じ込む。そんなわけがないとドラえもんが言い聞かせてものび太は聞く耳を持たなかったので、タイムマシンに乗ってのび太の生まれた日がどんなものだったのかを確かめに行こうと2人で11年前に出かける。

のび太が生まれた日のパパは、自分の初めての子供が生まれたことで興奮し喜びのあまり居ても立ってもいられないような状態だった。ついさっき生まれた自分の赤ん坊が病院にいるはずだということも忘れて自宅で赤ちゃんを探し回っているのだから、まともな精神状態ではないことが伺える。喜びと興奮のあまり我を忘れているのだ。のび太たちが赤ちゃんは病院にいるはずだとパパに教えてやると、パパは「それだー!!!!!」と一目散に病院へと駆け出す。もはやどうにもこうにも誰にも止められないという状況だった。

病院ではパパとママが初めての子供の誕生に心から感激している様子が伺え、のび太は自分の考えがはっきりと間違いだったことに気がつく。パパは赤ちゃんに「のび太」という名前を付けることにしたとママに伝える。名前の由来は、ママの病室の窓から見える大きな木のように、健やかに大きくどこまでもどこまでものびのびと育ってほしいという思いからだった。のび太はそれを聞き、自分が両親の期待にきちんと応えられていないかもしれないと感じ、少し落ち込む。

そのまま未来へ帰ると、今日がのび太の誕生日だったことを思い出したパパとママが、のび太を心配して探しに来てくれる。のび太が「ぼくが生まれてよかった?」と尋ねるとパパははっきりと「あぁ、よかったよ!」と告げるのだった。

 

・「ぼくの生まれた日」でぼくが昔から大きな違和感を持っている場面

ぼくが違和感を持ったのは生まれたての赤ちゃんを横に、パパとママが赤ちゃんの将来について病室で語っている場面だ。

ママ「いい子に育ってほしいわ」
パパ「いい子に決まってるさ!」

パパ「君に似たら、成績優秀間違いなしだ。」
ママ「あなたに似たら運動なら何でも来いのスポーツマンね。」
パパ「学者になるかな、政治家になるかなぁ。」
ママ「芸術家もいいわね、絵でも彫刻でも音楽でも。」
パパ「何でもいい、社会のために役立つ人間になってくれれば!」

と言って2人の会話は終わるのだが、ぼくは赤ちゃんの将来の話が「何でもいい、社会のために役立つ人間になってくれれば!」というまとめで終わることにとても違和感を持っていた。大抵の親というものはのび太のパパのように、子供に「社会の役に立ってほしい」と願っているものなのだろうか。

 

 

・人間は何でもいいから社会のために役立てばいいというのは本当か?

ぼくにも最近妹に赤ちゃんが生まれとても可愛がっているが、間違ってものび太のパパのように「何でもいいから社会のために役立つ人間になってほしい」なんて全く願えない。それって今生まれた赤ちゃんが、将来大人になって社会の部品として正常に稼働し上手に金を稼ぐことを願っているということではないか。ぼくには全くそのような発想は浮かばない。

赤ちゃんというものは、いつも「全体」で生きている神聖な生き物だ。大人のように他人と比較し、自分はあの人より優れているとかあの人よりは魅力がないとか相対的な迷妄の世界に迷い込みながら、人間集団の「部品」として大人しく従順に我慢して生きることでしか自分の価値を見出せないというような生き方をしていない。赤ちゃんは世の中のことなどふり向きもせず、他人のことさえ気にせずに自分とだけ向き合って真剣に生きている絶対的な生命だ。赤ちゃんは自分のためだけに生き抜き、自分のためだけに行動している。そんな燃え盛るような純粋な本能を発揮させている生命に向かって、「社会のために役立つ人間になってほしい」などとわざわざ他人を気にする相対的な部品になってしまうように願うとは何事だろうか。

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親というものは、ただ、子供の幸せを願えばいいのではないだろうか。もちろん全ての親は子供の幸福を願っているだろう。しかしその幸せは、その子が成長して将来自分自身で決めればいい概念ではないだろうか。それを「人間の幸せ=他人の役に立つこと」だと勝手に決めつけ、だからこそ他人の役に立つように育ってほしいなどというのはあまりに浅はかで身勝手な発想ではないだろうか。

他人の役に立って労働する人々の中でも、本当は労働なんてやりたくはないけれど自分の生活のために我慢して耐え忍んで他人の役に立っているという人は大勢いることだろう。大抵の労働というものは、労働しなければ給料をもらえずお前は死ぬだろうという脅迫から来る強制労働だ。多くの人々は本当は働きたくもないのに生活のために働かざるを得ないように、そしてそれにより国家という人間の集団がより多くの金を生み出すようにコントロールされ操られている。実際に、あなたには定期的にお金をあげるから働かなくていいよと言われたならば、労働をやめる人は大勢いるだろう。「社会のために役立つ人間」が、幸せであるなんて決して断言できるはずがない。みんな我慢して、仕方なく、生きるために強制労働をさせられているだけだ。

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そのような観点から言えば、親が子供に「社会のために役立つ人間になってほしい」と願うことは、いかにトンチンカンな願い事か明白になるだろう。親は我が子が、幸せになってほしいと願うに決まっている。すべての子供に対する親の願いの根底にあるのは「この子に幸せになってほしい」という願いではないだろうか。その幸せの形は、それぞれ子供達が将来自分で見出せばいいのだ。あろうことかそれを「社会のために役立つ人間になることは幸福に決まっている」などと決めつけ、社会のために役立つ人間になるように願うのはお門違いだ。社会に役立つ人間の中にも、我慢したり耐え忍んだりして不幸な思いをしている人はたくさんいる。社会のために役立つ人間なんて大抵の場合、それが生活のための強制労働である以上、多かれ少なかれ不幸な感情を抱いているのではないだろうか。それなのに「社会の役に立ちますように」だなんて、ぼくは愛しい赤ちゃんに決して願えない。ぼくはただ赤ちゃんに「健やかに育ってほしい」「幸せになってほしい」と願うだけだ。

もしかして「社会のために役立つ人間になってほしい」という願いの中には、将来たくさんのお金を稼いで楽をさせてほしいという親心も少しは含まれているのだろうか。もしそうならばお金を稼ぐことこそが人生の目的であるという、資本主義の概念が赤ちゃんにまで行き渡っているという時点で非常に恐ろしい思いだ。人生の目的が多くのお金を稼ぐことではないことくらい、ちょっと自分の人生について考えてみればすぐにわかることである。

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社会のために役立つ人間になりたいかどうかはその子が決めるべきだし、社会のために役立つことが幸福かどうかはその子の感性が決めることだ。社会のために役立つこと、他の多くの人々と同様に自分の人生の時間を犠牲にして他人のために時間を費やすように強制されるということが、その子にとってどんな意味を持つのか、その子にとって自分の人生の時間を本当はどのように使うべきだと感じるのか、その感性がまだ確定もしていないうちから、「社会のために役立つ人間になってほしい」などと親が強く願うことは残酷である。

 

・社会の役に立たない人間は、人間として価値のない欠落した存在だというのは本当か?

親が子に「社会のために役立つ人間になってほしい」と願うのは当然だという風潮が世間にはあるが、果たしてそれは本当だろうか。確かに親が子に「社会のために役立つ人間になってほしい」と願うことは、一見何の問題もなく常識的でまさしく正常な意見という感じがする。しかしぼくは初めてこのパパのセリフを映画館で聞いたときから、とてつもない違和感と嫌悪感を感じていた。「社会のために役立つ人間になってほしい」というのは、実はものすごくひどくて残酷な言葉ではないだろうか。

我が子が「社会のために役立つ人間になってほしい」と願う親の気持ちの裏には、「社会のために役立たない人間には決してなってほしくはない」「社会の役に立たない人間というのは、人間として価値のない欠落した存在だ」「社会の役に立たない人間というのは、異常で人間として最低な存在だ」という残酷な思い込みが密かに隠されているような気がするのだ。このような裏の気持ちなしに「社会のために役立つ人間になってほしい」などと発言できるだろうか。もちろんのび太のパパはそんなひどいことを言っているつもりはないし、世間では正常と見なされる願いをただただ我が子に託しただけだが、優しくて純粋そうに見えるその顔の裏には、無意識領域の中に「社会の役に立たない人間というのは、人間として欠落した存在だ」などという思い込みが潜在的に存在していることは否定できないだろう。それらの残酷な思い込みなしに「社会のために役立つ人間になってほしい」などと願える理(ことわり)はないからだ。

ぼくの意見としては、この世の全ての人間には何らかの生きている意味があり、役割があり、使命があり、生きている価値があると思っている。だからこそ赤ちゃんには「社会のために役立つ人間になってほしい」なんて決して願えない。そう願うことは「社会の役に立たない人間は、人間として価値のない欠落した存在だ」と無意識に思い込んでいることを意味してしまうからだ。どんなに役立たずでも、孤独な人々でも、大いなる罪人でも、すべての人間の魂には価値があると信じるからこそ、ぼくは「社会のために役立つ人間になってほしい」などとは死んでも願わない。どんな大人に育ってもいいから、ただ幸せになってほしいと願うだけである。どんな大人に育っても、この世には「間違った」人間なんていないのだ。もちろん社会の役に立たないからと言って、決して間違った人間とはならない。

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その観点から言ってぼくの意見とのび太のパパの意見は対立しており、だからこそぼくは「社会のために役立つ人間になってほしい」の発言に幼い頃からずっと反発を抱いていたと思われるが、まぁ世の中にはいろんな意見があって多様性があった方がいいのだろう。ただぼくが気持ち悪いと思う点は、「社会のために役立つ人間になってほしい」と発言するのび太のパパは実は残酷な人間性なのに、「社会のために役立つ人間になってほしい」と願う親は常識的で、正常で、ふさわしい親の理想像として映画の中で描かれていることである。しかし今まで散々考察してきたように、彼の発言は親として理想的な発言ではなく、人間として残酷なものだとぼくの感性では感じざるを得ない。

 

 

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